Wavesには数多くのコンプレッサーがありますが、その中でも長く使われ続けている定番のひとつが「CLA-76 Compressor / Limiter」です。

CLA-76は、音量を整えるだけのコンプレッサーというより、

  • 音を前に出す
  • アタックを強調する
  • ピークを素早く抑える
  • 音に勢いや存在感を加える
  • アナログ機材らしい質感を足す

といった使い方に向いています。

ボーカル、ドラム、ベース、ギターなど幅広い音源に使用でき、シンプルな見た目に反して、設定によって大きく音の印象が変わるプラグインです。

この記事では、CLA-76の基本的な使い方から、各パラメーターの意味、楽器別の設定例、便利な使い方、音を潰しすぎないコツまで詳しく解説します。


CLA-76とは

CLA-76は、WavesとミックスエンジニアのChris Lord-Alge氏によって開発された、FET方式のコンプレッサーを再現したプラグインです。

元になったハードウェアは非常に速いアタックタイムを持つことで知られており、CLA-76もその素早い反応と、力強く前に出る音を特徴としています。

WavesはCLA-76において、次の2種類の個体をモデリングしています。

  • Bluey:Revision B、通称Blue Stripe
  • Blacky:Revision D-LN、通称Blackface

両者はゲイン段、動作時間、歪み、ノイズなどの特性が異なります。

CLA-76は、自然に音量を均一化する目的だけでなく、積極的に音色を作る「キャラクター系コンプレッサー」として使いやすいプラグインです。

200種類以上のWavesプラグインを収録した最大級のバンドル。ミックス、マスタリング、レコーディング、ボーカル処理など、幅広い音楽制作に対応します。こちらをクリックして商品詳細をご覧ください

CLA-76はどのような音に向いているのか

CLA-76が特に使いやすいのは、次のような音です。

ボーカル

声の大きな部分を抑えながら、ボーカルをミックスの前方に配置しやすくなります。

ロックやポップスのように、楽器が多い中でも歌をしっかり聴かせたい場合に便利です。

ドラム

キック、スネア、ルームマイク、ドラムバスなどに使用できます。

設定によってはピークを抑えるだけでなく、アタックを強調してパンチを出したり、ルームマイクを激しく圧縮して迫力を加えたりできます。

ベース

ピッキングやスラップの瞬間的なピークを抑えながら、ベースの存在感を前に出せます。

音量差の大きいベースを整えるというより、輪郭や勢いを加えたい場合に向いています。

ギター

エレキギターのバッキングを前に出したり、クリーンギターの粒を揃えたりする用途に使えます。

アコースティックギターでは、ストロークの強いアタックを抑える使い方もできます。


CLA-76の各パラメーター

CLA-76は一般的なコンプレッサーとは操作方法が少し異なります。

特に重要なのが、独立したスレッショルドつまみがないことです。

INPUT

INPUTは、プラグインに送り込む信号レベルを調整します。

CLA-76ではスレッショルドが固定されているため、INPUTを上げることで信号を強くコンプレッサーへ送り込み、圧縮量を増やします。

つまり、基本的には次のように考えると分かりやすいです。

  • INPUTを上げる:コンプレッションが深くなる
  • INPUTを下げる:コンプレッションが浅くなる

一般的なコンプレッサーのスレッショルドを下げる操作に近い役割を、CLA-76ではINPUTが担っています。

最初はメーターをGRにして、ゲインリダクションを確認しながらINPUTを調整します。


OUTPUT

OUTPUTは、コンプレッション後の音量を調整します。

INPUTを上げると、圧縮量だけでなく聞こえる音量も変化します。そのため、INPUTを上げたらOUTPUTを下げ、処理前と処理後の音量をできるだけ揃えます。

Wavesも、CLA-76でINPUTを動かした場合はOUTPUTを反対方向へ調整し、音量を保ちながら圧縮量を決める方法を紹介しています。

音量が大きくなっただけで「音が良くなった」と判断しないためにも、出力音量を揃えて比較することが重要です。


ATTACK

ATTACKは、入力信号に対してコンプレッサーがどのくらい速く反応するかを調整します。

CLA-76で最も間違えやすい部分ですが、数字が大きくなるほど速くなります。

  • 1:遅い
  • 7:速い

公式マニュアル上では、約1ミリ秒から50マイクロ秒未満までの範囲となっています。

アタックを遅くする場合

音の立ち上がりをある程度通してから圧縮します。

そのため、

  • ドラムの打音を残す
  • ベースのピッキングを強調する
  • ギターの輪郭を出す

といった使い方に向いています。

音にパンチを出したい場合は、まずATTACKを2〜4付近から試すと調整しやすいでしょう。

アタックを速くする場合

音の立ち上がりから素早く圧縮します。

  • ボーカルの急なピークを抑える
  • スネアの鋭いアタックを丸める
  • ベースのスラップ音を抑える
  • 音を密度の高い状態にする

といった用途に使えます。

ただし、速くしすぎると音の勢いや輪郭が失われることがあります。


RELEASE

RELEASEは、音量が下がったあと、コンプレッションが解除されるまでの速さを調整します。

RELEASEもATTACKと同じく、数字が大きいほど速くなります。

  • 1:遅い
  • 7:速い

公式マニュアルでは、約1秒から50ミリ秒までの範囲です。

リリースを速くする場合

コンプレッサーがすぐに元へ戻るため、音に勢いや躍動感が出やすくなります。

ドラム、ロックボーカル、リズミカルなベースなどで使いやすい設定です。

一方で速すぎると、音量が細かく揺れたり、歪みっぽく聞こえたりする場合があります。

リリースを遅くする場合

コンプレッションがゆっくり解除されるため、音量変化が滑らかになります。

ボーカルや持続音には使いやすい反面、遅すぎると次の音が来ても圧縮されたままになり、音が奥へ引っ込むことがあります。


RATIO

RATIOは圧縮比率を選択します。

CLA-76では、次の比率を選べます。

  • 4:比較的扱いやすい
  • 8:強めのコンプレッション
  • 12:かなり強い
  • 20:リミッターに近い強い圧縮
  • ALL:すべてのレシオボタンを押した状態

4:1

最初に試しやすい設定です。

ボーカル、ベース、ギターなど、幅広い音に使用できます。

ただしCLA-76では、レシオを変更するとスレッショルドも変化します。そのため、単純に「4は弱く、20は強い」とは限りません。

公式マニュアルでは、4:1のほうが20:1より低いレベルから圧縮が始まるため、素材によっては4:1のほうがゲインリダクション量が多くなる場合があると説明されています。

レシオを切り替えたら、必ずINPUTを再調整しましょう。

8:1

ボーカルのピークをしっかり抑えたい場合や、ベースを安定させたい場合に使いやすい設定です。

4:1よりも圧縮された質感が分かりやすくなります。

12:1、20:1

強いピークを抑えたり、音を積極的に加工したりするときに使用します。

自然な音量補正というより、音を強く押し出したい場面に向いています。

ALL

ALLは、元になった実機で複数のレシオボタンを同時に押すことで生まれた、通称「All Buttons In」モードです。

非常に強い圧縮と歪みを伴う、荒々しい音になります。CLA-76の公式マニュアルでも、ドラムのパラレルコンプレッションに効果的なモードとして紹介されています。

ドラムバス、ルームマイク、パーカッションなどに使用すると、通常のコンプレッションでは得られない迫力を作れます。


METER

メーターは、次の3種類を切り替えられます。

  • GR:ゲインリダクション量
  • IN:入力レベル
  • OUT:出力レベル

基本的にはGRに設定しておけば、どのくらい圧縮されているかを確認できます。

音量調整を細かく確認したい場合は、INとOUTも切り替えて確認します。


BLUEYとBLACKYの違い

CLA-76では、2種類のRevisionを切り替えられます。

BLACKY

BLACKYは、低ノイズ化されたRevision D-LNをモデリングしています。

比較的まとまりがよく、さまざまな楽器に使いやすい印象です。

初めてCLA-76を使う場合は、まずBLACKYから試すと調整しやすいでしょう。

BLUEY

BLUEYは、Chris Lord-Alge氏が所有するRevision Bの個体をモデリングしています。

BLACKYよりも色付けを感じやすく、音を前に出したい場面や、少し荒々しい質感が欲しい場面で試す価値があります。

ただし、どちらが必ず優れているというものではありません。

同じ設定でも音の反応や質感が変わるため、ミックスの中で切り替えて選ぶのがおすすめです。


ANALOG

ANALOGでは、アナログ機材のノイズフロアや電源由来のハムを再現します。

  • 50Hz
  • 60Hz
  • OFF

日本では地域によって電源周波数が異なりますが、ここでは実際の電源環境に合わせる必要はありません。

あくまで音色として選びます。

複数のトラックでCLA-76を使用すると、アナログノイズが積み重なって目立つ場合があります。現代的でクリーンなミックスにしたい場合は、OFFで問題ありません。

特に無音部分の多い楽曲、ピアノ曲、オーケストラ、映像向けBGMなどでは、ノイズが不要であればOFFをおすすめします。


MIX

MIXは、処理前の音とCLA-76で圧縮した音を混ぜるためのつまみです。

  • 0%:原音のみ
  • 100%:圧縮音のみ

この機能を使うことで、別のFXチャンネルを作らなくてもパラレルコンプレッションができます。

例えば強く圧縮したあとにMIXを30〜50%まで下げると、原音の自然なアタックを残しながら、圧縮音の密度や存在感を加えられます。

CLA-76で音が潰れすぎたと感じた場合も、すぐにINPUTを下げるのではなく、MIXを下げて原音を戻す方法が使えます。


TRIM

TRIMは、プラグイン全体の最終出力レベルを調整します。

OUTPUTでも音量は調整できますが、OUTPUTはモデリングされた実機の動作や質感に関係します。

そのため、

  1. INPUTで圧縮量を決める
  2. OUTPUTで大まかに音量を合わせる
  3. TRIMで最終的な音量差を微調整する

という順番で使うと分かりやすくなります。


AUTO MAKEUP

新しいバージョンのCLA-76には、AUTO MAKEUP機能が追加されています。

AUTO MAKEUPを有効にすると、コンプレッションによって変化した音量を自動的に補正してくれます。

Waves V16ではCLA-76を含む複数のコンプレッサーにAuto Makeup Gainが追加されており、処理前後の音量差に惑わされず、圧縮による音色やダイナミクスの変化を比較しやすくなっています。

ただし、AUTO MAKEUPが常に完璧に音量を揃えるとは限りません。

最終的にはTRIMを使用し、バイパス時と同程度の音量になるよう耳で確認しましょう。


CLA-76の基本的な使い方

CLA-76を初めて使う場合は、次の順番で調整すると分かりやすくなります。

1.ANALOGをOFFにする

まずは余計なノイズが加わらない状態で音を作ります。

アナログらしいノイズも含めて使いたい場合は、最後に50Hzまたは60Hzを試します。

2.RATIOを4にする

最初は4:1から始めます。

強い圧縮が必要になったら、8、12、20へ切り替えます。

3.ATTACKとRELEASEを中央付近にする

目安として、

  • ATTACK:3〜4
  • RELEASE:4〜5

から始めます。

ここから素材に合わせて速くしたり遅くしたりします。

4.メーターをGRにする

ゲインリダクション量を確認できるようにします。

5.INPUTを上げる

音を再生しながらINPUTを上げ、ゲインリダクションが動くところまで信号を送り込みます。

自然に整える場合は、ピーク部分で3〜5dB程度から試します。

強く音を前に出したい場合は、5〜10dB以上圧縮することもあります。

ただし、数値だけで決めるのではなく、ミックス全体で音を確認することが重要です。

6.OUTPUTまたはTRIMで音量を揃える

バイパス時と処理後の音量をできるだけ揃えます。

音量を揃えた状態で、

  • 音が前に出たか
  • アタックが失われていないか
  • 音が細くなっていないか
  • 不自然に揺れていないか

を確認します。

CLA-76は単体でも便利ですが、MercuryにはCLAシリーズやSSL系、EQ、リバーブなど、ミックスで使いやすいプラグインが多数収録されています。 CLA-76は単体でも便利ですが、MercuryにはCLAシリーズやSSL系、EQ、リバーブなど、ミックスで使いやすいプラグインが多数収録されています。

ボーカルでの使い方

CLA-76は、ボーカルを前に出したい場合に非常に使いやすいコンプレッサーです。

ボーカルの基本設定例

  • Revision:BLACKY
  • Ratio:4
  • Attack:3〜5
  • Release:5〜7
  • Gain Reduction:ピークで3〜7dB
  • Mix:100%
  • Analog:OFF

ATTACKを少し遅めにすると、声の立ち上がりや子音を残しながら音量を整えられます。

RELEASEを比較的速くすると、次の言葉が来る前にコンプレッションが戻りやすくなり、ボーカルが前に出て聞こえます。

ボーカルが引っ込む場合

ボーカルが奥へ引っ込んで聞こえる場合は、ATTACKが速すぎる可能性があります。

ATTACKを少し遅くし、声の最初の部分を通してみます。

語尾が不自然に持ち上がる場合

RELEASEが速すぎる可能性があります。

RELEASEを少し遅くすると、語尾の音量変化が滑らかになります。

ボーカルが硬くなる場合

圧縮量を減らすか、MIXを70〜90%程度まで下げます。

またはCLA-76の後ろにCLA-2Aを配置し、2台で少しずつ圧縮する方法も使えます。


CLA-76とCLA-2Aを直列で使う

ボーカルでは、CLA-76とCLA-2Aを組み合わせる方法も効果的です。

順番は次のようにします。

CLA-76 → CLA-2A

CLA-76で瞬間的なピークを捕まえ、その後のCLA-2Aでフレーズ全体を滑らかに整えます。

Wavesも、CLA-76を先に使って高速なピークを抑え、CLA-2Aで緩やかにレベリングするシリアルコンプレッションを紹介しています。

CLA-76側

  • Ratio:4
  • Attack:4〜6
  • Release:5〜7
  • Gain Reduction:1〜3dB程度

CLA-2A側

  • Peak Reduction:2〜4dB程度
  • Gain:処理前と音量を合わせる

1台で10dB圧縮するよりも、2台で3dBずつ圧縮したほうが自然に聞こえる場合があります。

このようにCLA-76とCLA-2Aを組み合わせると、1台だけでは作りにくい自然なボーカル処理ができます。
Mercuryなら、こうした定番プラグインをまとめて使用できます。 このようにCLA-76とCLA-2Aを組み合わせると、1台だけでは作りにくい自然なボーカル処理ができます。 Mercuryなら、こうした定番プラグインをまとめて使用できます。

ドラムでの使い方

CLA-76は、ドラムのアタックや勢いを調整する用途に向いています。

スネアの設定例

  • Ratio:4または8
  • Attack:2〜4
  • Release:5〜7
  • Gain Reduction:3〜7dB

ATTACKを遅めにしてスネアの最初のアタックを通し、その後を圧縮すると、打音が強調されます。

スネアが細く感じる場合は、ATTACKを少し遅くします。

逆にアタックが鋭すぎる場合は、ATTACKを速くします。


キックの設定例

  • Ratio:4
  • Attack:2〜4
  • Release:4〜6
  • Gain Reduction:2〜5dB

キックではATTACKを速くしすぎると、ビーターの音や低域の立ち上がりが弱くなる場合があります。

ソロだけで判断せず、ベースと同時に再生しながら調整します。


ドラムバスの設定例

  • Ratio:4
  • Attack:1〜3
  • Release:5〜7
  • Gain Reduction:1〜3dB
  • Mix:50〜100%

ドラムバスでは、全体を強く潰すよりも、少量のゲインリダクションで音をまとめる使い方ができます。

ただしCLA-76は音色の変化が大きいため、自然な「接着感」が欲しい場合はSSL系のバスコンプレッサーのほうが適していることもあります。

CLA-76は、ドラム全体へ勢い、アタック、荒々しさを加えたい場合に向いています。


ALLモードを使ったパラレルコンプレッション

CLA-76らしい使い方のひとつが、ALLモードを使ったドラムのパラレルコンプレッションです。

設定例

  • Ratio:ALL
  • Attack:4〜7
  • Release:6〜7
  • Input:強く圧縮されるまで上げる
  • Mix:10〜40%
  • Analog:好みに応じて選択

まず、音が明らかに潰れるところまで強く圧縮します。

その後、MIXを下げて原音へ少しずつ混ぜます。

圧縮音だけを聴くと不自然でも、原音へ少量混ぜることで、

  • ドラムの胴鳴り
  • ルーム感
  • 音の密度
  • 演奏の勢い

を加えられます。

ALLモードは自然に整えるための機能ではなく、積極的な音作りに使う機能と考えると分かりやすいでしょう。


ベースでの使い方

CLA-76は、ピッキングやスラップなど、アタックの強いベースに向いています。

ベースの基本設定例

  • Revision:BLACKY
  • Ratio:4
  • Attack:3〜5
  • Release:4〜6
  • Gain Reduction:3〜6dB
  • Mix:70〜100%

ATTACKを遅くすると、ピッキングの輪郭が強くなります。

逆にATTACKを速くすると、ピッキングの飛び出しを抑え、丸い音にできます。

低音が細くなった場合

次の点を確認します。

  • INPUTを上げすぎていないか
  • ATTACKが速すぎないか
  • RELEASEが速すぎて低音が揺れていないか
  • 低域のピークに反応しすぎていないか

CLA-76にはサイドチェーンのハイパスフィルターがないため、低域の大きなベースではコンプレッサーが過剰に反応することがあります。

その場合は圧縮量を減らすか、MIXを下げて原音を戻します。


ギターでの使い方

エレキギター

歪んだエレキギターは、アンプや歪みエフェクトの段階ですでに音量差が小さくなっています。

そのためCLA-76を深くかける必要はなく、

  • 音を前に出す
  • ピッキングを揃える
  • 音色へ質感を加える

といった目的で薄く使用します。

設定例

  • Ratio:4
  • Attack:3〜5
  • Release:4〜6
  • Gain Reduction:1〜3dB

アコースティックギター

ストロークのピークを抑える場合はATTACKを速めにします。

一方で、ピッキングの輪郭を残したい場合はATTACKを遅くします。

設定例

  • Ratio:4
  • Attack:3〜5
  • Release:4〜6
  • Gain Reduction:2〜5dB
  • Mix:70〜100%

アコースティックギターは強く圧縮すると、ピックノイズやブレス、部屋鳴りが目立つことがあります。

ソロではなく、他の楽器と一緒に確認しましょう。


オーケストラやBGM制作で使う場合

CLA-76はロック系の音源だけでなく、オーケストラや映像向けBGMでも使用できます。

ただし、オーケストラ全体へ強くかける用途にはあまり向いていません。

使いやすいのは、次のような部分です。

  • パーカッションのピーク調整
  • 太鼓やタムのアタック強調
  • ソロ楽器の急なピーク処理
  • エレキベースやシンセベース
  • 効果音の質感作り
  • 強いブラス音源のピーク処理

ストリングスバスやマスターバスへ使用する場合は、ゲインリダクションを1〜2dB程度に抑え、音楽的な強弱を失わないよう注意します。

クラシック寄りの音楽では、ANALOGをOFFにしてノイズを加えないほうが扱いやすいでしょう。


COMP OFFの便利な使い方

COMP OFFにするとコンプレッション機能は停止しますが、CLA-76の回路を通したようなプリアンプ由来の質感は残ります。

公式マニュアルでも、COMP OFFはFETゲインリダクション部分やプリアンプを通したときの歪みを再現する機能として説明されています。

そのため、

  • 圧縮はしたくない
  • BLUEYやBLACKYの色付けだけ欲しい
  • 音を少し前に出したい
  • トラックへ軽い倍音感を加えたい

という場合に使用できます。

INPUTを上げ、OUTPUTで音量を下げると、圧縮せずに回路のキャラクターを強められます。

ただし、音量が大きくなっただけで良く感じていないか、必ずTRIMで音量を揃えて比較しましょう。


CLA-76を上手に使うコツ

数字ではなくリズムに合わせてRELEASEを決める

RELEASEは数値だけで決めるのではなく、曲のテンポや演奏に合わせます。

コンプレッションが次の音まで残っていると、リズムが重く感じられます。

逆に解除が速すぎると、音量が細かく揺れて落ち着かなくなります。

メーターの針が曲のリズムに合わせて戻る位置を探すと、自然に設定しやすくなります。


最初は大げさに設定してから戻す

ATTACKやRELEASEの違いが分かりにくい場合は、一度INPUTを上げて強く圧縮します。

強く圧縮された状態でATTACKを1と7に切り替えると、音の立ち上がりの違いが分かりやすくなります。

RELEASEも同様に、1と7を比較します。

違いを確認したあと、INPUTを下げて必要な圧縮量へ戻します。


ソロだけで音を完成させない

CLA-76は音を前に出す効果が強いため、ソロで気持ちよい音にすると、ミックス全体では目立ちすぎる場合があります。

特にボーカル、スネア、ベースは、他の楽器と一緒に鳴らしながら判断します。


処理前後の音量を必ず揃える

コンプレッサーを使うと、出力音量が変化します。

人間の耳は音量が大きい音を良い音と感じやすいため、音量差がある状態では正しく比較できません。

AUTO MAKEUPを使用する場合も、最後はTRIMで調整し、バイパスとの音量差を確認しましょう。


ゲインリダクション量を目標にしすぎない

「ボーカルなら必ず5dB」「ベースなら必ず3dB」という決まりはありません。

録音状態、演奏、アレンジ、ジャンルによって適切な圧縮量は変わります。

ゲインリダクションメーターは参考にしつつ、最終的にはミックスの中で判断します。


CLA-76がうまく使えないときの原因

音が潰れてしまう

考えられる原因は次のとおりです。

  • INPUTが高すぎる
  • ATTACKが速すぎる
  • RELEASEが遅すぎる
  • レシオが高すぎる
  • MIXが100%になっている

まずINPUTを下げます。

それでも音が平坦な場合はATTACKを遅くし、原音の立ち上がりを残します。

MIXを下げてパラレルコンプレッションにする方法も有効です。


音が細くなる

ATTACKが速すぎると、音の輪郭や低域の立ち上がりが失われる場合があります。

ATTACKを遅くするか、ゲインリダクション量を減らします。

ベースやキックでは、RELEASEが速すぎることで低域が不安定になる場合もあります。


音量が不自然に揺れる

RELEASEが速すぎる可能性があります。

特にベース、ピアノ、パッドなどの持続音では、コンプレッサーが音の波形に細かく反応し、歪みや音量の揺れが発生することがあります。

RELEASEを遅くするか、圧縮量を減らします。


かけても違いが分からない

まずメーターがGRになっているか確認します。

そのうえでINPUTを上げ、ゲインリダクションが5〜10dB程度動く状態を一度作ります。

ATTACK、RELEASE、Revisionを大きく切り替え、違いを確認してから自然な設定へ戻します。


CLA-76がおすすめな人

CLA-76は、次のような人に向いています。

  • ボーカルをミックスの前に出したい人
  • ドラムにパンチを加えたい人
  • ベースのアタックを整えたい人
  • ロックやポップスを制作する人
  • パラレルコンプレッションを試したい人
  • アナログ機材らしい質感を加えたい人
  • シンプルな操作で積極的に音作りをしたい人
  • Waves Mercuryなどのバンドルを持っている人

特に、通常のデジタルコンプレッサーでは音が整うだけで物足りないと感じる場合に、CLA-76は便利です。


CLA-76をおすすめしにくいケース

一方で、次のような用途では別のコンプレッサーが使いやすい場合があります。

  • 透明に音量だけを整えたい
  • スレッショルドを細かく指定したい
  • Kneeやサイドチェーンフィルターを調整したい
  • マスタリングで厳密に制御したい
  • ミックスバス全体を自然にまとめたい
  • クラシック音楽のダイナミクスを保ちたい

CLA-76は、細かな数値管理をするコンプレッサーではなく、音を聴きながら素早くキャラクターを作るタイプです。

透明な処理にはデジタルコンプレッサー、ミックスバスにはSSL系、滑らかなレベリングにはCLA-2Aなど、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。


まとめ

Waves CLA-76は、非常に速い反応と、前に出る力強い音を特徴としたFETコンプレッサーです。

基本的な操作方法は次のとおりです。

  1. RATIOを選ぶ
  2. ATTACKとRELEASEを設定する
  3. INPUTで圧縮量を決める
  4. OUTPUTとTRIMで音量を揃える
  5. 必要に応じてMIXで原音を戻す

CLA-76で特に覚えておきたいのは、ATTACKとRELEASEの数字が大きいほど動作が速くなることです。

また、INPUTは単なる入力音量ではなく、実質的にコンプレッション量を決める重要なパラメーターです。

自然な音量補正から、ALLモードを使った激しいパラレルコンプレッションまで対応できるため、ひとつ持っていると幅広い制作で活用できます。

私自身、プラグインは「正しい数値」に合わせるものではなく、楽曲の中で必要な役割を作るための道具だと考えています。

CLA-76も、メーターだけを見るのではなく、バイパスと比較しながら、

  • 音が前に出たか
  • リズムが良くなったか
  • 演奏の勢いが残っているか
  • 他の楽器と共存できているか

を確認することが大切です。

最初は4:1、ATTACK 3、RELEASE 4付近から始め、そこから楽曲に合わせて調整してみてください。

200種類以上のWavesプラグインを収録した最大級のバンドル。ミックス、マスタリング、レコーディング、ボーカル処理など、幅広い音楽制作に対応します。CLA-76をはじめ、定番プラグインをまとめて導入したい方におすすめです。 200種類以上のWavesプラグインを収録した最大級のバンドル。ミックス、マスタリング、レコーディング、ボーカル処理など、幅広い音楽制作に対応します。CLA-76をはじめ、定番プラグインをまとめて導入したい方におすすめです。