楽曲制作を依頼するとき、多くの方が気になるのは、

「どんな曲を作ってもらえるのか」
「自分のイメージを形にしてもらえるのか」
「他の楽曲と似た雰囲気にならないか」

といった部分ではないでしょうか。

現在は、パソコンと音楽制作ソフトがあれば、さまざまな音楽を作れる時代になりました。

使用できる音源やプラグインも充実しており、以前よりも高品質な楽曲を制作しやすくなっています。

一方で、同じような制作環境を使っていても、完成する楽曲の印象は作り手によって大きく異なります。

その違いを生むものの一つが、制作に使用する音源やプラグインの選び方、そして、それらをどのように組み合わせるかです。

一つの音だけに頼らず、楽曲に合う音を選ぶ

私は楽曲を制作するとき、一つの音源やプラグインだけですべてを完結させることはあまりありません。

楽曲の方向性に合わせて、

  • 柔らかく自然な音
  • 存在感のある音
  • 広がりを感じる音
  • 温かみのある音
  • 現代的でクリアな音

など、必要な質感を考えながら複数の音源を使い分けています。

たとえばオーケストラ楽曲であれば、Spitfire Symphony OrchestraやMUSIO、VSLなどを使用しながら、楽器ごとの表情や楽曲全体の雰囲気に合う音を選びます。

ピアノについても、すべての楽曲に同じピアノ音源を使用するのではなく、明るい曲、静かな曲、壮大な曲など、作品の方向性に合わせて選択しています。

これは、たくさんのプラグインを使うこと自体が目的なのではありません。

依頼された楽曲に必要な音を選び、よりイメージに近い仕上がりにすることが目的です。

既製品のような音に聞こえないために

音源には、それぞれに特徴があります。

そのまま使用してもきれいな音は出ますが、音源を選んで並べただけでは、楽曲全体の印象が似通ってしまうことがあります。

そこで私は、複数の音を組み合わせたり、楽器の配置や音の距離感を調整したりしながら、楽曲ごとに音のバランスを整えています。

同じピアノやストリングスを使用する場合でも、

  • どの音を前に出すか
  • どの音を少し遠くに配置するか
  • どの楽器を重ねるか
  • どこに余白を作るか

によって、聴いたときの印象は変わります。

依頼者の方が細かな音響用語を知らなくても問題ありません。

「優しい雰囲気にしたい」
「高級感を出したい」
「感動的にしたい」
「映像を邪魔しないようにしたい」

といった言葉から、必要な音の方向性を考え、制作に反映していきます。

プラグインは、楽曲の個性を引き出すための道具

制作では、Waves、Ozone、Omnisphere、Trilian、Superior Drummerなど、さまざまなプラグインや音源を使用しています。

ただし、依頼者の方にとって重要なのは、どの製品を使っているかではなく、最終的にどのような楽曲が完成するかです。

高価なプラグインを使用すれば、必ず良い楽曲になるわけではありません。

楽曲の雰囲気や用途に合わせて適切に使い分けることで、初めてその良さを活かすことができます。

私にとってプラグインは、音を豪華に見せるためのものではありません。

依頼者の方が求めるイメージを形にし、その楽曲らしい個性を引き出すための道具です。

楽曲の用途に合わせて音を作る

同じ楽曲でも、使用される場所によって適した仕上がりは変わります。

歌もの楽曲では、ボーカルが自然に前へ出ることが重要です。

映像用BGMでは、ナレーションや映像の邪魔をせず、それでいて場面の雰囲気をしっかり支える必要があります。

配信活動やライブで使用する楽曲では、最初の数秒で印象を残すことや、歌いやすい構成にすることも大切です。

そのため、私は単純に音を増やして豪華にするのではなく、楽曲の用途を考えながら必要な音と不要な音を整理しています。

依頼者の方が実際に使用する場面まで想像しながら制作することで、見た目だけではなく、実際に使いやすい楽曲に仕上げていきます。

「違い」は、派手さだけではありません

他の楽曲との違いを出すというと、珍しい音を使ったり、派手なアレンジにしたりすることを想像するかもしれません。

もちろん、そのような表現が合う楽曲もあります。

しかし、すべての楽曲に派手さが必要なわけではありません。

音数を抑えた楽曲や、シンプルな構成の楽曲でも、音の選び方や演奏の付け方、展開の作り方によって、その曲ならではの個性を出すことができます。

目立つ音を入れることだけが差別化ではなく、

「何度も聴きたくなる」
「歌声や映像に自然になじむ」
「その人の活動イメージに合っている」

と感じてもらえることも、大切な違いだと考えています。

制作環境を増やし続ける理由

私は現在も、新しい音源やプラグインを導入しながら、制作環境を少しずつ広げています。

新しい製品を集めることが目的ではありません。

制作できる音楽の幅を広げ、依頼者の方から届くさまざまな要望に対応できるようにするためです。

かわいらしい楽曲、壮大なオーケストラ、落ち着いたピアノ曲、ロック、ポップス、映像向けBGMなど、楽曲によって求められる音は異なります。

選択肢を多く持つことで、決まった音や作り方に当てはめるのではなく、依頼内容に合わせて柔軟に制作できます。

一曲ごとに、必要な音を考える

楽曲制作には、さまざまな方法や考え方があります。

作り手によって得意なジャンルや制作方法も異なり、それぞれに魅力があります。

私が大切にしているのは、一曲ごとに必要な音を考え、同じ作り方を繰り返さないことです。

依頼者の方の活動内容や楽曲の用途、伝えたい雰囲気を確認しながら、使用する音源やプラグイン、アレンジの方向性を選んでいきます。

細かな機材や専門知識を意識する必要はありません。

「こんな雰囲気にしたい」
「自分らしい曲がほしい」
「活動のイメージに合う楽曲を作りたい」

という気持ちを伝えていただければ、そのイメージに合う音をこちらで考え、形にしていきます。

AI生成曲をそのまま使用する制作との違い

現在は、AIを使って短時間で楽曲を生成できるようになりました。

新しいアイデアを探したり、普段とは違うジャンルの方向性を確認したりするうえで、AIはとても便利な道具です。

私自身も、楽曲の発想や参考としてAIを活用することがあります。

ただし、AIで生成された楽曲を、そのまま依頼者の方へ納品することはありません。(当然ですけど)

生成された内容を参考にする場合でも、

  • メロディが依頼内容に合っているか
  • コード進行が楽曲の雰囲気に合っているか
  • 歌いやすい音域になっているか
  • 楽曲の展開が自然につながっているか
  • 使用される場面に合った構成になっているか
  • 依頼者の方らしさが表現されているか

といった部分を確認し、必要に応じて作曲や編曲を改めて行います。

ピアノ、ストリングス、ドラム、ベースなどの音も、楽曲に合わせて一つずつ選び直し、演奏やバランスを調整していきます。

AIが生成した結果に少し手を加えるだけではなく、AIを発想を広げるための道具の一つとして活用しながら、最終的には作曲家として判断し、楽曲を組み立てます。

依頼者の方とのやり取りから意図をくみ取り、活動内容や使用目的に合わせて細かく調整していくことは、自動生成だけでは完結しない部分です。

「すぐに作れる楽曲」ではなく、「自分のために考えて作られた楽曲」がほしい。

そのようなご依頼に応えるために、AI、音源、プラグインなど、それぞれの道具を適切に使い分けながら、一曲ずつ丁寧に制作しています。

さまざまな音源やプラグインを使い分け、一曲ごとに必要な音を考えること。

そして、AIを含む便利な技術に任せきりにせず、最後は人の耳と判断で仕上げること。

それが、私が楽曲制作で大切にしていることです。


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